まずは、このことについてお話ししましょう。

まあ、医学的に正確かどうかはわかりませんが、「花粉症」の「症」は「症候群」の「症」だと思ってください。
原因は同じだけど、いろいろなところにいろいろな症状が出る病気の「ようす」のことをいいます。
たとえば、花粉症は「鼻」だけの症状ではありません。目やノドや、あるいは皮膚などにも、花粉(がくっつくこと)が原因で症状が出ることがあります。

こうなると、よく似た意味で使われる「アレルギー性鼻炎」という言葉では不十分です。なにせ、鼻以外にも症状が出るのですから(じつは、目のほうはアレルギー性結膜炎という、また違う病名がつけられます)。
そういった意味で「花粉症」と呼ばれるのだと考えてください。「病気」よりも一段低くて軽いものだということはありません。「花粉症」は、いろいろな症状が合わさった、立派な「病気」なのです。
だから、患者自身も周りの人も、「そんなもの」と、バカにしないようにしてくださいね。

さて、いま「アレルギー性鼻炎」という言葉が出てきましたが、その「アレルギー」とはどのようなものなのでしょうか。

花粉症とアレルギー

まず、健康な人が花粉を吸い込んだとします。
本当の意味で健康ならば、人体にとって花粉は細菌のような「敵」ではないので、別になんともありません。

ところが、アレルギーの素質をもった体質の人が花粉を吸い込むと、その人の体は花粉を「敵」だと思ってしまうんですね。
そこで、「抗体(こうたい)」というものを作ります。

その「敵」が本当に細菌であれば、次に同じ細菌が入ってきたときに、この「抗体」が攻撃をして、菌をやっつけます。抗体は敵のことを覚えているのです。
だから、病気にならない。
こういう体のしくみを「免疫(めんえき)」といいます。
ワクチンなんかを使った「予防接種」の注射も、この「免疫」の力を利用したものですね。

ここまでお話しすれば、もうわかるでしょう。
アレルギーというのは、この「免疫」のしくみが、少しおかしくなってしまうという病気なんです。無害なものを敵だと誤認してしまう病気といったらいいでしょうか。
「免疫」が弱まっているとか強まっているとかではありません。強い弱いではなく、バランスが崩れているとでも思ってください。
「免疫」のしくみをつかさどる「司令部」が、なにか勘違いしているのです。

アレルギーの人(花粉症になってしまった人)にとっては、花粉は敵ですから、いろいろな攻撃をします。
鼻水を出して、鼻に入ってきた花粉を洗い流そうとします。
くしゃみで、外に出してしまおうとします。鼻をつまらせて、花粉が入ってこないようにします。
目のかゆみは……う~ん、どう考えたらいいんでしょうか。
目をかゆくすることで、「目をあけるな」というサインを出しているんでしょうか。
それとも、手でかいてもらって、ついた花粉を落としてもらいたいということなんでしょうか。
涙目になる人は、鼻水と同じで、花粉を洗い流そうとしているんですね。