春一番を皮切りに、強い風が吹き荒れる春。中医学では、この「風」は春という季節の象徴と考えている。「風は外だけでなく、体の中でも吹き荒れる」なんて考えるところが独特だ。

こじつけみたいに思えるかもしれないが、春にイライラしやすいのも、頭に血が昇りやすいのも、この「体の中の風」のせいなのである。

 

もうちょっと詳しく説明しよう。体の中の風は、自然界の風と似たような症状を起こす。特徴は、「突然起こる」「体の上のほうに症状が現れやすい」「変化しやすい」ということ。イライラや頭に血が昇りやすいという状態も、この条件にぴったりと一致する。

これらの症状は、「酸味」のある柑橘類で、春特有のイライラを撃退や実はダイエットに最適の春、「苦味」で余計なものを「出す」「下げる」で紹介したように、体の中のエネルギーである気のめぐりが、春のエネルギーに揺さぶられて起こるのだけれど、もっとダイレクトに、外界の「風」が体の中に入ってきて起こる病気がある。それは何か?

 

答えは、「かぜ」。そう、鼻水や咳や熱が出たりする、あのかぜのことである。「なんだか言葉遊びみたい」と思うかもしれないけれど、かぜを「風邪」と書く理由に思いを馳せると、案外納得がいくと思う。

 

今では、かぜはウイルスが引き起こすものだと誰もが知っているが、それが分からなかった時代にも、ちゃんと対処法は存在していた。「風のような症状を引き起こす邪(じゃ)が体内に入ってきた!その邪を追い出せば病気は治る」と考えたのだ。それがかぜ=風邪の語源なのである。

 

外界から体内に侵入して、風のような症状を引き起こす邪を、中医学では風邪(ふうじゃ)と呼ぶ。ここではかぜとの混同を避けるために、風の邪、と呼ぶことにする。さてこの風の邪、なにもかぜを引き起こすウイルスのことだけを指すわけではない。実は、花粉症の原因である花粉も、風の邪のひとつなのである。